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抽象化を哲学する vol. 1

そもそも抽象化とは?

上の図は、知の発展を表現した図です[1]
「横軸」の拡大は、知識の「量的」な拡大を意味しています。
「縦軸」は「抽象度」を示しています。上に行くほど「抽象的」、下に行くほど「具体的」な情報であることを意味しています。
例えば、小学生が漢字を勉強する場合、覚えた漢字の数だけ情報量が増えるため、三角形が横軸に広がります。ですが、ただひたすらに覚えるだけでは三角形は横にしか広がりません。
ここで、「さんずい」は水に関係するものであるなど、漢字にはある法則があることに気が付くと、情報を抽象化でき、三角形が縦方向に広がります。

漢字の学習の例


このように、抽象化とは「情報と情報の関係性」に着目し、その共通項・法則を発見することであり、縦方向に三角形を広げることで、具体の世界を俯瞰して眺めることのできる「鳥の目」を得ることができます。縦方向に成長できると、具体の世界の見通しが格段に良くなり、発想が豊かになります。みなさんにもそのような実感をした経験があるのではないでしょうか。

ここでは、抽象化とは何なのかを哲学していきたいと思います。
(哲学≒抽象化であるので、抽象化を抽象化していくということかもしれません。)

大事なのは縦の移動

ここで問題解決の3パターン[1]を見てみます

左の図は、具体病の人の問題解決です。
実際に起きていることに目が行き、そこに対する断片的な処置を施します。

真ん中の図は、抽象病の人の問題解決です。
机上で考えているだけで具体的な行動に落とし込めません。

右の図が、問題解決のあるべき姿です。
縦の移動を行うことで、起きた事象から根本原因に立ち返って対処できます。

新しい製品の開発を考えてみると・・・
・具体病(左):過去の設計資産に基づいて、ちょっと変更した設計を行う。(チェンジニアリング)
・抽象病(中):コンセプトだけ出して、具体的な設計に落とし込めない。(机上の空論)
・縦移動(右):顕在化した課題から潜在的な課題を導き、根本対策を施した設計をする。(イノベーション)

といったように、縦の移動を行うことで、良い製品の開発を行うことができます。

このように、具体的・抽象的であること自体ではなく、具体 ⇒ 抽象 ⇒ 具体の移動を行うことが重要で、質の良いアウトプットを出すために必要なのです。

<参考文献>

[1] 「具体 ⇔ 抽象」トレーニング、細谷功 著、PHP研究所

クロソイド曲線

ここでは、クロソイド曲線の紹介をします。

クロソイド曲線は「曲率の変化」が一定な曲線のことです。
曲率 (curvature) とは、曲線の曲がり具合を示す値であり、曲率を一定にしたまま線を伸ばしていくと円になります。その円の半径を「曲率半径」といい、曲率の逆数になります。

円の曲線の長さ\(q\)と接線ベクトルの角度\(\phi\)の関係を式に表すと以下になります。
$$ \phi=\phi_0+c_1 q $$
\(\phi_0\)は接線ベクトルの角度の初期値です。
ここで曲率\(c_v\)は、\(\phi\)を\(q\)で微分した値であり、円の場合は、
$$ c_v=c_1 = const. $$
となることが分かります。

曲率を曲線の長さに対して一定に変化させていったものがクロソイドで、その曲線の長さ\(q\)と接線ベクトルの角度\(\phi\)の関係は下記になります。
$$ \phi=\phi_0+c_1 q + c_2 q^2$$

円の場合と同様に、\(\phi\)を\(q\)で微分すると、
$$ c_v=c_1 + \frac{1}{2}c_2 q$$
となり、曲線の長さに対して一定の割合で変化していることが分かります。


ここで、わかりやすい例として、車で考えてみたいと思います。
曲線を車の通った道だとすると、曲率はハンドルの傾き(回した量)と同じになります。
ハンドルを一定の傾きで固定した状態で走れば、車の通る道は円を描きます。

車が走った距離に応じて、ハンドルを一定の速度で回していったときに車の通った道が描く曲線がクロソイドになります。

ハンドルを急に切る必要がないため、高速道路の出入り口の曲線の設計などに用いられているそうです。

クロソイド曲線に関して、詳しくはこちらの論文に記載しています。

I. Takeuchi and S. Katsura, “Interpolation of a Clothoid Curve Based on Iterative True-Value Prediction Considering the Discretization Error,” in IEEE Transactions on Industrial Informatics, vol. 14, no. 11, pp. 5156-5166, Nov. 2018, doi: 10.1109/TII.2018.2797925.

https://ieeexplore.ieee.org/document/8269384