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「7つの習慣」から学ぶ、経営者・エンジニアに必要な原則思考

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はじめに

会社を経営していると、日々の意思決定や人間関係、時間の使い方など、様々な課題に向き合うことになります。今回は、そうした課題に向き合う上で土台となる考え方を教えてくれる一冊、スティーブン・R・コヴィー著「7つの習慣」をご紹介します。

以前、改めてこの本を読み直す機会があり、その際にまとめた内容をベースにお伝えします。


「7つの習慣」とは?

著者のスティーブン・リチャーズ・コヴィー(1932-2012)が書いたこの本は、全世界で3,000万部、日本国内でも200万部を超えるベストセラーで、自己啓発書の代表格として知られています。1989年の初版以来、時代を超えて読み継がれている一冊です。

なぜ他の自己啓発本と違うのか

コヴィーは、アメリカ建国以来発行された約200年分の「成功」に関する文献を調査したと言われています。その結果見えてきたのが、以下のような違いです。

  • 第二次世界大戦以降(直近50年ほど)の自己啓発書:コミュニケーションスキルやモチベーションアップなど、即効性・短期的なテクニックに焦点を当てたものが中心
  • 第二次世界大戦以前の文献:小手先のテクニックではなく、根本的な人格を育てることに焦点を当てたものが中心

「7つの習慣」は後者の考え方を土台にしており、長期的・持続的に効果を発揮する原則を扱っている点が、他の自己啓発本との大きな違いだとされています。


7つの習慣の全体像

7つの習慣は、大きく3つのステップに分かれています。

ステップ習慣目的
Step1:私的成功①主体的でいよう/②最初に終わりを思い描こう/③最優先事項を優先しよう自分が成功する(自立)
Step2:公的成功④Win-Winを考えよう/⑤まず相手の理解に徹しよう/⑥シナジーを創発しようみんなで成功する(相互依存)
Step3:再新再生⑦刃を研ごうさらに自分を磨く

順番も重要で、まず自分自身が「自立」した状態(私的成功)を築いてから、他者との「相互依存」(公的成功)に進む、という構造になっています。「依存→自立→相互依存」というステップを踏むことで、単なる技術ではなく、人格そのものが育っていく、というのがこの本の考え方です。

各習慣のポイント


習慣①:主体的でいよう

私たちの周りには、自分の力で変えられることと、変えられないことがあります。前者を「影響の輪」、後者を含めた関心事全体を「関心の輪」と呼びます。

反応的な人は、天気や他人の言動、景気など、自分にはコントロールできない「関心の輪」の外側に意識とエネルギーを注いでしまいます。不満や愚痴は多くなりますが、状況は何も変わりません。それに対して主体的な人は、自分が実際に影響を及ぼせる「影響の輪」の中に力を注ぎます。すると、行動の結果が積み重なり、影響の輪そのものが少しずつ広がっていく、という好循環が生まれます。

経営でも同じことが言えます。市場環境や景気を嘆くのではなく、「自社が今できること」に集中し続けることが、結果的に会社の影響力を広げていくことにつながります。。


習慣②:最初に終わりを思い描こう

この習慣では、「3年後に行われる自分の葬儀で、誰にどんな言葉をかけられたいか」を想像するワークが紹介されています。配偶者にどんな夫・妻だったと言われたいか、子供にどんな親だったと言われたいか、会社の同僚や部下にどんな人だったと言われたいか——こうした問いに向き合うことで、自分の内面の奥深くにある「基本的な価値観」に触れることができるとされています。

何を「人生の中心」に置くか

人は無意識のうちに、何かを人生の中心に据えて生きています。しかし、何を中心に置くかによって、心の安定度は大きく変わってくるとされています。いくつか例を挙げます。

  • 仕事中心の人:仕事の成果や評価に自分の価値を重ね合わせてしまうため、プロジェクトが失敗したり、業績が振るわなかったりすると、自分自身の存在価値まで揺らいでしまいます。経営者やマネージャーほど陥りやすいパターンです。
  • 家族中心の人:家族の幸せを何より優先する一方で、家族の誰かが自分の思い通りにならない状況(子供の反抗期、家族間のトラブルなど)に直面すると、心の安定が大きく崩れてしまいます。家族への愛情自体は尊いものですが、それだけを拠り所にすると不安定になりやすいということです。
  • お金中心の人:経済的な安定を追い求めるあまり、いつの間にかお金そのものに縛られてしまいます。資産が増えても増えても安心できず、逆にお金を失うことへの恐怖が意思決定を歪めてしまうことがあります。
  • 自己中心の人:自分の利益や快適さを最優先にする生き方です。短期的には楽ですが、周囲からの信頼や協力を得にくくなり、長期的には孤立しやすい傾向があるとされています。受け取るばかりで与えることをしないため、人間関係や社会との接点が細くなっていきます。

このように、仕事・家族・お金・自己など、何か一つの対象に人生の中心を置くと、その対象の浮き沈みに応じて心が揺さぶられ続けることになります。これに対して、コヴィーが提案するのが「原則を中心に置く」という考え方です。公正、誠実、正直、貢献、成長といった、時代や状況が変わっても揺るがない普遍的な原則を中心に据えることで、何が起きても心が安定した状態を保てる、とされています。


習慣③:最優先事項を優先しよう

「緊急度」と「重要度」で仕事を4つの領域に分けたとき、多くの人は「緊急で重要なこと(第I領域)」の対応に追われる日々を送りがちです。締切のある仕事や突発的なトラブル対応などがこれにあたります。

しかし本当に大切なのは、「緊急ではないが重要なこと(第II領域)」——中長期の計画づくり、スキルアップ、人間関係の構築、体調管理など——に、あらかじめ時間を確保しておくことだとされています。この本では「木こりのジレンマ」という例え話が紹介されています。斧の切れ味が悪くなっているのに、「研いでいる暇なんてない」と言いながら鈍った斧で木を切り続ける木こりの姿は、まさに第II領域を後回しにしてしまう私たちの姿そのものです。

第II領域の仕事を先にスケジュールに組み込み、余った時間で第I領域に対応する——この順番を意識するだけで、次第に緊急対応に追われる場面自体が減っていくとされています。


習慣④:Win-Winを考えよう

人間関係や交渉ごとには、「自分が勝って相手が負ける(Win-Lose)」「自分が負けて相手が勝つ(Lose-Win)」「両者とも負ける(Lose-Lose)」など、様々なパターンがあります。この習慣では、双方が満足できる「Win-Win」の関係、あるいはそれが実現できないなら無理に取引しない「No Deal」を選ぶという考え方が紹介されています。

Win-Winを実現するための前提として、「自分か相手か」の二者択一ではなく、双方が納得できる「第3の案」が必ず存在すると信じることが出発点になります。また、それを支えるのが「勇気」と「思いやり」のバランス、そして、この世には皆に行き渡るだけの豊かさがあるという「豊かさマインド」だとされています。


習慣⑤:まず相手の理解に徹しよう

人は誰かの話を聞いているとき、無意識のうちに「評価する(同意か反対かを判断する)」「探る(自分の関心から質問する)」「助言する(自分の経験から助言する)」「解釈する(自分の価値観で相手の行動を説明する)」といった、自分本位の反応(自叙伝的反応)をしてしまいがちです。

これらはすべて、「相手を理解する」よりも先に「自分がどう思うか」を優先してしまっている状態です。そうではなく、相手の立場に立ち、相手の価値観の中に入り込んで理解しようとすることで、初めて信頼関係が生まれるとされています。話の途中で評論を始めてしまうと、相手が本当に伝えたかったことは、その先にあったかもしれません。


習慣⑥:シナジーを創発しよう

「全体は各部分の総和よりも大きくなる」というのが、この習慣の中心にある考え方です。①〜⑤の習慣(主体性、終わりを思い描く力、優先順位づけ、Win-Winの姿勢、相手への理解)を土台にできているチームでは、メンバー一人ひとりの能力を単純に足し合わせた以上の、異次元の成果が生まれるとされています。

そのためには、グループの全員が「古い脚本」——固定観念や過去のやり方——を手放し、新しい発想を一緒に作り上げていく姿勢が必要です。対立する意見があっても、それを排除するのではなく、そこから第3の創造的な案を生み出す機会と捉えることがポイントです。


習慣⑦:刃を研ごう

最後の習慣は、「肉体」「知性」「社会」「精神」という4つの側面から、自分自身を継続的にメンテナンスし続けることの重要性を説いています。

  • 肉体:ランニングや筋トレなど、体を動かす習慣
  • 知性:読書など、学び続ける習慣
  • 社会:新しい人間関係を築いたり、苦手な人ともコミュニケーションを取ったりする習慣
  • 精神:自然に触れる、自分自身と向き合う、価値観を確認するといった習慣

先ほどの「木こりのジレンマ」がここでも当てはまります。目の前の仕事に追われて自分を磨く時間を後回しにし続けると、いずれ「斧」そのものが鈍り、成果を出すこと自体が難しくなってしまいます。①〜⑥の習慣を長期的に実践し続けるためにも、この「刃を研ぐ」時間を意識的に確保することが欠かせません。


本を読むのが苦手な方には

文章量が多く、読み切るのが大変に感じる方もいるかもしれません。そうした場合は、YouTube等で内容を分かりやすく解説している動画から入るのも一つの方法です。まずは全体像をつかんでから、気になった章だけ本で深掘りする、という読み方もおすすめです。


まとめ

「7つの習慣」は、テクニックではなく人格そのものを育てることに焦点を当てた一冊です。経営やチームマネジメントに関わる中で、判断に迷ったときの拠り所になる考え方が詰まっています。気になった方は、ぜひ手に取ってみてください。

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抽象化の実践方法「Why」と「How」の使い分け(vol.2)

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前回、『具体 ⇒ 抽象 ⇒ 具体』という『縦』の移動を行うことが、質の良いアウトプットを出すために重要という話をしました。
でも、縦に移動しろと言われてもどうやってやればいいんですか?って方のために、『具体 ⇒ 抽象 ⇒ 具体』の縦移動を行うための考え方[1]を紹介したいと思います。

具体 ⇒ 抽象(抽象化)=『Why』を問う

まずは『具体 ⇒ 抽象』の抽象化フェーズです。抽象化するには『Why(なぜ)』を問います。

例えば、あなたが新製品開発プロジェクトのメンバーで、上司から、ステッピングモータ1軸・ボールねじ・直動ガイドを組み合わせたようなあるユニットの詳細設計を任されたとします。
ここで、上司から与えられた構成を何の疑いもなくそのまま採用し、設計してしまうのは三流の設計者のやることだと思います。
優秀な設計者は必ず設計時に『具体 ⇒ 抽象』(抽象化)を行います。
<第一段階の抽象化>
・なぜボールねじを使うのか?その他の直動変換ではダメか?
・なぜステッピングモータを使うのか?その他のアクチュエータではダメか?
などです。

そして上記を考えてくと、その過程で必ずこの設計に求められている要求仕様にスポットが当たります。
<第二段階の抽象化>
・なぜこのようなスペックを求められているのか?(スピードや精度)
・なぜこのようなスペースの制約があるか?
実は絶対的な制約と思われていたことも、ある条件下では制約でなくなったりする場合もあります。そういった部分も紐解いていかないと、製品全体として良いものは作れません。
そのためには、上司だけでなく、他の設計者や営業などの他部署との関わりも出てくるため、主体的な姿勢が必要になります。
すなわち、部分最適でなく全体最適を目指した相互コミュニケーションが必要になります。

上記を考えていくと、さらに上位の視点まで視野が広がります。
<第三段階の抽象化>
・なぜこのユニットが必要なのか?
・そもそも使用するお客様は何を求めているか?

このように、なぜを問い続けることで抽象化が進み、より上位の視点で自分の仕事を捉えることができます。
このような姿勢は、トヨタの「なぜなぜ5回」や、ホンダの「A00」と本質的には同じであり、抽象化がとても重要なことであることを物語っています。


上記は製品開発の例ですが、他の例も下記に示します。

<製品企画段階の例>
お客様の「顕在ニーズ」から「潜在ニーズ」を探るフェーズがまさに抽象化が必要なフェーズだと思います。
お客様の生の声にただ従ってしまうと、本当に良い製品のコンセプトは作れません。なぜお客様はそう言っているのか。Whyを問いましょう。

<流用設計の例>
過去の設計者がなぜそのように設計したのか。Whyを問いましょう。Whyを問うことで設計意図が見えてきます。過去の設計者(生み出した世代)の人たちの意図を汲み取っていかないと、何も根本的に変えられない小手先の変化しか生み出せない設計者になってしまいます。

抽象 ⇒ 具体(具体化)=『How』を問う

Whyを突き詰めて問題を抽象化できたら、次にその解決策を考えるために具体化を行います。具体化には『How(どのように)』を問います。
抽象化する前とした後では、Howの選択肢(自由度)がとても広がっていることが分かると思います。景色が広がるため、本当に良い手段も見つけられる可能性が高まります。具体から具体は見えにくいのですが、抽象から具体は見やすいのです。地上からは隣町の様子は見えませんが、空からは見ることができます。
具体化には、ピラミッドの横軸(知識の幅)が必要になります。知識の幅が狭いと、せっかく広い景色が見えたにもかかわらず、良い解にたどり着けません。
新製品開発の場合であれば、プロジェクトメンバーで抽象的な視点を共有したうえで、メンバーで議論することがとても重要だと思います。ここで担当者が自分の知識の幅でしか物事を考えられないと、製品としての可能性を狭めることになってしまいます。
自分なりによく考えたつもりでも、他のメンバーから意見をもらい「痛いところを突かれた」と思うことはよくあるかと思います。その瞬間は製品開発において大きなターニングポイントだと思います。その時の初動が、後に大きな差を生む場合もあります。
意地をはらず、真摯に他のメンバーの意見を受け入れ、自分なりに解釈し、最終的には自分なりに新たな答えを見つけることで、本当に良い開発ができるのだと思います。

<参考文献>

[1] 「具体 ⇔ 抽象」トレーニング、細谷功 著、PHP研究所

https://amzn.to/4b3OXQL

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抽象化とは?「具体⇔抽象」の思考法をビジネス視点で解説(vol.1)

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そもそも抽象化とは?

上の図は、知の発展を表現した図です[1]
「横軸」の拡大は、知識の「量的」な拡大を意味しています。
「縦軸」は「抽象度」を示しています。上に行くほど「抽象的」、下に行くほど「具体的」な情報であることを意味しています。
例えば、小学生が漢字を勉強する場合、覚えた漢字の数だけ情報量が増えるため、三角形が横軸に広がります。ですが、ただひたすらに覚えるだけでは三角形は横にしか広がりません。
ここで、「さんずい」は水に関係するものであるなど、漢字にはある法則があることに気が付くと、情報を抽象化でき、三角形が縦方向に広がります。

漢字の学習の例


このように、抽象化とは「情報と情報の関係性」に着目し、その共通項・法則を発見することであり、縦方向に三角形を広げることで、具体の世界を俯瞰して眺めることのできる「鳥の目」を得ることができます。縦方向に成長できると、具体の世界の見通しが格段に良くなり、発想が豊かになります。みなさんにもそのような実感をした経験があるのではないでしょうか。

ここでは、抽象化とは何なのかを哲学していきたいと思います。
(哲学≒抽象化であるので、抽象化を抽象化していくということかもしれません。)

大事なのは縦の移動

ここで問題解決の3パターン[1]を見てみます

左の図は、具体病の人の問題解決です。
実際に起きていることに目が行き、そこに対する断片的な処置を施します。

真ん中の図は、抽象病の人の問題解決です。
机上で考えているだけで具体的な行動に落とし込めません。

右の図が、問題解決のあるべき姿です。
縦の移動を行うことで、起きた事象から根本原因に立ち返って対処できます。

新しい製品の開発を考えてみると・・・
・具体病(左):過去の設計資産に基づいて、ちょっと変更した設計を行う。(チェンジニアリング)
・抽象病(中):コンセプトだけ出して、具体的な設計に落とし込めない。(机上の空論)
・縦移動(右):顕在化した課題から潜在的な課題を導き、根本対策を施した設計をする。(イノベーション)

といったように、縦の移動を行うことで、良い製品の開発を行うことができます。

このように、具体的・抽象的であること自体ではなく、具体 ⇒ 抽象 ⇒ 具体の移動を行うことが重要で、質の良いアウトプットを出すために必要なのです。

<参考文献>

[1] 「具体 ⇔ 抽象」トレーニング、細谷功 著、PHP研究所

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